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 今年の冬からクラブツーリズムで「小田急沿線を歩く」というツアーの講師役を務めさせて頂いているのですが、先日は、その4回めの行程として喜多見駅から向ヶ丘遊園駅までを歩き、途中で次太夫堀公園の民家園という所に立ち寄ってきました。

 世田谷区立のこの公園には江戸時代から明治初期の農村の姿を再現したという一画があり、数軒の昔ながらの民家も移築されています。この民家園の素晴らしいところは、建物の中に自由に入れることで、昔の生活を偲ぶことができます。それにしても、実際に昔ながらの建物の中に入ってみると、かなり暗い。

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 こういった私たちの身の回りに潜んでいる闇を日本的なものとして称賛したのは谷崎潤一郎ですが、改めてここに『陰影礼賛』の一節を引用するまでもなく、本当に、なぜか日本人は住まいの中に太陽光を採り込むことには無頓着で、むしろ陰を作ることを好んでいたように感じます。考えてみると現代の私たちの生活にしても、ファミレスの店内であれ、コンビニの店内であれ、私たちの住まいの中であれ、そのほとんどが陰のない、フラットな明るさに満ちています。

 確かに暗闇は人間を不安にし、生活を不便にこそすれ便利にはしないように感じられるのですが、こうして昔ながらの建物を見ると、住まいの中に潜む暗闇もまた、私たちの心に、なにがしかの豊かさをもたらす力があるのかもしれない。そんな気持ちにもなったりします。

 谷崎は『陰影礼賛』を「陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。」という一文を用いて結んでいますが、今日の私たちの生活でも、そんな気持ちを持ってみるのも、悪いことではなさそうです。

次太夫掘公園:東京都世田谷区喜多見5-27-14
世田谷区のHP
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