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私たち家族が横浜に引っ越して間もなくのことだから、もう50年以上前のことになる。横浜駅西口の駅前に、ただ一つ高いビルがあって、高島屋というデパートだった。
 店の奥のデパートに飛び乗るなり、父は「8階」と行く先を告げ、エレベーターガールに「当店には8階はございません」と応えられた。「じゃあ、一番上」と父は答え直したかもしれないが、なにしろ一番上の階に行きたかったのだ。そこで「駅弁大会」をやっていたから。そんな会話を今もって覚えているのだから、そのおっちょこちょいぶりが父らしかったのだろう。そしてその頃は、横浜駅の高島屋でも、時々駅弁大会をやっていて、なぜか駅弁が大好きな父は、催しがあれば一度は家族を連れて出かけ、幾つもの駅弁を買ったのだった。
 そのころ、つまり小学校の低学年の頃の私がいちばん好きだったのは、人吉駅の「栗めし」で、当時は今ほど駅弁が豪華絢爛になってしまった時代ではない、その彩りが、子供心にも印象的だったのだと思う。
 写真は、もう何年か前に人吉に取材に出かけた際に購入した「栗めし」。仕事で人吉に行くことができたのも、嬉しかった。何しろ高校2年生の時以来のことで、その当時は機関庫にC55がいたのだ。昭和48年の夏のことだから、もうC55は貴重な存在で、夕方になってカメラをバッグにしまった途端にC55が出てきて写真を撮ることができなかったことを、強烈に覚えている。これだけはっきり覚えているのだから、むしろ「撮れなくて良かった」のかもしれない。
 そして、その無念から30年以上が過ぎて久しぶりに出かけた人吉で、長い取材を一段落させ、少し陽が傾き始めた頃に食べた「栗めし」が、写真のもの。
 こうして今の目には、むしろ地味にさえ見えてしまうくらいなのだから、人吉の「栗めし」は、高島屋の駅弁大会で食べた頃と、あまり変わってはいないのかもしれない。

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