『のんびりとした地勢に耕地と耕地の続いたぐあいは見たばかりでもここちがよい。土の色の感じも柔らかい。山の上の麦畑なぞは深い雪にうずもれているころに、ここには残雪のかたまりすらなく、麦の芽の豊かにのびて青々としたのを見るのも楽しい。信州あたりの耕地に比べると、まるで庭園のような気がする。野に出て麦の芽を踏んでいる人たちまで農夫とは思えない。園丁だ。春先降る雨の暖かさも思いやられる。信州にいるころ、たまにあの山の上から降りて来て見ると、
「ああ柔らかい雨が降るなあ。」
私はそう思い思いしては寒い国の方へ引っ返していった。』

 長い引用ですみません。優しい文章です。描写されているのは、現在の中央線の中野から先(つまり下り寄り)の風景。記したのは島崎藤村で、1913(大正2)年に発表された「甲武線」という文章の中の一節。私鉄の甲武鉄道は明治末期に国有化されるわけですが、まだこの頃には「甲武線」という呼び名が普通に使われていたのでしょうね。
 こんな「田舎」に住めるなら、住みたいものです。

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特急「はと」について書くべく、色々なものを読んでいたら、内田百間の「阿呆列車」に行き着いた。『なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行つて来ようと思ふ』というクダリで始まる阿呆列車シリーズの第1回の旅が敢行されたのは、百間61歳のときだった。
 つまり、「数え」なら、今の私と同じということになる。気がついたら私も爺さんねー、ということなのだが、今の私には「阿呆列車」のように、前借りをしてまで一等車に乗ることなどできない。
 似たような仕事をしているはずなのだが…。
 昔は良かった。そう、結論はいつも、これである。


お手伝いをさせて頂きましたメディアックス刊「みんなの鉄道DVD book JR北海道スペシャル」が、先週末のことですが、自宅に届きました。
 今回は記事の構成で2転3転した部分もありはしたのですが、編集に手間がかかった書籍というのは、仕上がってみると特に嬉しいものです。
 記事中には鉄道カメラマンの荒川好夫さんと長根広和さんの対談もあって、こういう記事を読むと、北海道に行きたくなる。長根さんのように、落石~別当賀で一日過ごしてみたい、と痛感させられるわけです。「どこに行きたい」という初夏の時期の願望は、ほとんどの場合、果たせないままに終わるのですが、今年の目標「北海道と北アルプスに1度は行く」、これをなんとか実現したいものです。

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いま、私の手元に時代の先端をゆく漫画『ねことじいちゃん』がある。ねこまきという、実に脱力な著者名は置いておいて、この漫画もネコという、どうせ大したことは考えていないはずの動物に振り回される人々の、ささやかな幸せが描かれている。
 舞台はネコがたくさんいる、とある島。主人公の一人である大吉じいちゃんは名古屋訛りの言葉を話すので、三河地方かどこかの島が舞台ということになるのだが、なに、描かれる風景は、日本の小島の普遍的なものだから、読み手が勝手に想像すればヨイ。
 登場するのはたくさんのネコと、それから島に住む高齢者がほとんどで、でも、皆ささやかに幸せそうに見える。つまり、閉塞感だらけの日本も、こうして高齢者が自立し、若者が高齢者をリスペクトして社会が回転すれば、目をそむけずにすむコミュニティが成立するのではないか?と、あざとい読者はそこにヒントを見出そうとするわけだが、なあに、ネコはそんな難しいことに関心なんかない。
 じいちゃんが、先立たれた妻のことを思い、ネコが来てからは絶えなかった夫婦喧嘩がなくなったと、ネコに向かって「うちに来てくれてありがとうなぁ」と呟く。それだけで、一つの物語が出来上がってしまうのだ。
 で、ネコは相変わらず膝の上で丸くなり、ときどき「ぶに~」などと啼いてみせるだけなのだが、なぜか、ちゃんと主役が務まるところが、巡り合わせの妙、である。

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記事を執筆させて頂きました『Kiite!』が自宅に郵送されてきました。うほほほほ。まるで女性誌。この本は郵便局に置かれるとのことですが、女性読者を意識した作りです。その中で今回は「グルメ列車に乗ろう!」という特集があり、その中に私の執筆記事があります。
 しかし、意外に大特集だったんだなー。それならもっと書きたかったなー。でも特集のトップに近いところの記事だし、歴史の話はこの中であれば私にしか書けないだろうから、それはそれでいいかなー、などと思いながら、日頃ちょっと見慣れない、パステル調デザインの誌面を繰ったのであります。厚い雑誌ではありませんけれど、この雑誌の編集さん、結構頑張ってますよ。郵便局で、是非、ごらん下さい。

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大井川鐡道5月8日発のプレスリリースについて、以下、お知らせします。
5月19日にブライダルトレインが運転されます。

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幸運の汽笛は二人で鳴らします
SLブライダルトレイン運行について

大井川鐵道㈱<本社:静岡県島田市、代表取締役:前田 忍>と㈱日本旅行<本社:東京都中央区、代表取締役:堀坂明弘>が共同で実施する「SLブライダルトレイン・パッケージプラン(通称 SL結婚式)」が5月13日(土)に挙行されます。今回は新郎新婦の強いご希望により「幸運の蒸気機関車」と呼ばれるC56形44号機がお二人の明るい未来への先導役として牽引いたします。詳細は以下のとおりです。

挙行日、運転概要について
運転日
2017(平成29)年5月13日(土)
運転時間
<往路>
新金谷駅発 12時35分 → 千頭駅着 14時02分
<復路>
千頭駅発 15時20分 → 新金谷駅着 16時57分

列車編成
<往路>
C56-44(正向)+普通客車+お座敷車+展望車
<復路>
C56-44(逆向)+展望車+お座敷車+普通客車

C56-44
1936(昭和11)年製造。最初は北海道・札幌近郊に配置されたが1941(昭和16)年軍事供出のため、タイ・ビルマ(現ミャンマー)方面に送られ、終戦後はタイ国鉄735号SLとして同地の復興、発展に寄与した。同機関車についてはこのまま日本に帰ってくることはないだろうと考えられていたが、1979(昭和54)年、奇跡的に日本への帰還をはたし、1980(昭和55)年から大井川鐵道で営業運転を始めた。このことから「奇跡の帰国を果たした幸運の蒸気機関車」と呼ばれることもある。今回のブライダルトレインの牽引機にはお二人の強いご希望でC56-44が担当することとなりました。多くの人たちを勇気づけ、希望の光をもたらしたC56-44に牽引された今回のブライダルトレインはお二人の愛と夢、多くの祝福を乗せ、新緑の川根路を快走します

参加人数
約80名
新郎・新婦プロフィール
新郎新婦
山本 誠(やまもと まこと)さん 39歳
山本 直子(やまもと なおこ)さん 42歳
ご出身
神奈川県
神奈川県
ご職業
鉄道模型販売店経営(平塚市)
保育士(小田原市)
ご結婚に至るまで
 ご友人のご紹介がお二人の出会い。
 御新郎の誠様は以前から大井川鐵道に通い鉄道写真を撮影するいわゆる「撮り鉄」。
 御新郎様のリードでお二人は何度も大井川鐵道を訪れ、お付き合いの中で愛を育んでこられました。
 御新婦の直子様の次に大井川鐵道を愛する御新郎様はある日、「SLブライダルトレイン・パッケージツアー」のことを知ります。そして、「二人の記念日はぜひこのプランで彩りたい」と御新婦様に相談されたのです。
 御新郎様の気持ちを世界で一番理解されている御新婦様はご主人の提案を快諾。5月13日のブライダルトレイン(SL結婚式)へと至ったのです。

「SLブライダルトレイン」誕生秘話
JR西日本のグループ会社である㈱日本旅行は、旅行会社として鉄道ファンを対象としたさまざまな鉄道関連企画を催行。中でもブライダルトレインは多くの取扱実績がありました。「鉄道での結婚式」という商品は、鉄道ファンのお客様に需要があることは明らかであったものの、ご依頼があって初めて企画・手配を行うものであり、その実現には多くの手間がかかることで、お客様の需要には応えきれないのが実態でした。
そこで、あらかじめ内容をパッケージ化することで、お客様にとっての実施ハードルを下げ、内容をわかりやすく伝え、なによりご満足いただける挙式方法を提供する手段として、鉄道会社との共同催行を考えたのです。開催パートナーを模索する中で、保存SL列車運行の草分けであり、鉄道に詳しくない方でもイメージのわきやすい大井川鐵道が浮上したのです。
一方、大井川鐵道でもその昔、お客様からのご要望でSL列車を貸切で運行、車内での結婚式を実施したことがありました。人生における「特別な日」の舞台をSLが務めるという経験をしながらも、実に長いブランクがあり、その実施ノウハウはほぼなくなっていたのです。
そのような事情の両者は共同開催での「SL結婚式」を実施することに合意。2013(平成25)年2月、舞台は大井川鐵道、販売は日本旅行で「SLブライダルトレイン・パッケージプラン」発売開始。初回は2014(平成26)年4月に催行、定期的にお客様にはお申込みをいただき、今回が5回目の実施となります。

当日のスケジュール(予定)
11時00分~11時40分
受付開始。新郎新婦デザイン、オリジナル記念硬券配布
11時20分~11時40分
新郎新婦が着付けなど準備終了後、新金谷駅に到着。
※報道機関のみなさまへ:お二人へのインタビューのこの時間を使って行っていただきますようお願い申し上げます
11時54分~12時16分
新金谷駅ホームにて挙式(人前式)
 新郎入場 新金谷駅長先導による新婦入場
 人前式説明
 結婚宣誓 結婚承認動議承認
 新金谷駅長 結婚証明書署名~授与
 新郎デザイン SL用オリジナルヘッドマークを二人で装着
 SL先頭部で記念撮影
12時35分
SLブライダルトレイン、新金谷駅を発車 乾杯発声
12時45分
新郎新婦検札(受付時に配布した記念硬券に入鋏)
13時04分
抜里駅通過~沿線住民のみなさんによる盛大な歓迎行動(大型パネル掲出と旗ふり)
新郎新婦は列車最後尾に展望車デッキよりお手振り返答
13時05分
大井川第一橋梁通過。川根温泉ふれあいの泉 露天風呂のみなさまからの手振りに展望車デッキよりお手振り返答
13時14分
地名駅停車(休憩)
13時27分
地名駅発車、主賓あいさつ
13時58分
千頭駅着
 SL前で記念撮影
 乗務員に記念品贈呈
14時40分
SL前にてケーキ入刀(ケーキはSLの形)
ラストバイト、ファストバイト 新郎新婦によるC56-44の汽笛吹鳴
15時20分
千頭駅発車 友人のみなさまによるスピーチ
16時01分~16時16分
抜里駅停車
沿線住民による歓迎行事 記念品交換 記念撮影
16時19分~16時29分
家山駅に停車
家山名物 抹茶たいやきの積み込み
16時57分
新金谷駅着
17時10分
閉宴式


旅に出たらカレーライスを食べたいということを言ったのは檀一雄で、チキンライスを食べたいと言ったのは池波正太郎。食通の先生方が何をまた?とも思わされるのだけれど、つまりは肩肘張らず、庶民的な味で、旅のひとときを楽しみたいということなのだろう。

 けれどもやっぱり、旅には蕎麦が欠かせない。この連休は長野県の松本市で蕎麦三昧を考えていたのだけれど、1泊2日くらいの旅ならば、なにも混み合う連休に出かける必要はない。そんなわけで連休は、一日だけ図書館と古書店を巡った以外は自宅で過ごした。

 その図書館の帰りは、自転車で走る道をいつもの東神奈川経由とは変えて、相模鉄道沿いに走ってみた。和田町から羽沢に抜ければ、途中の急坂を自転車を押して歩く必要はあるけれど、図書館のある日ノ出町から自宅のある新横浜への抜け道になる。
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 で、その途中で、和田町駅の近くにこんなお蕎麦屋さんを見つけ、自転車を止めて、歩道を後戻りして立ち寄ってみたという次第。

 午後の3時前のことで、お客さんはおらず、客席では店のおばちゃんが食事の最中。客席の天井近くにはテレビがあって、チープなサスペンスドラマを流している。捜査官があんな往来で、大声で捜査の打ち合わせをするかなーなどと思いながら食べた盛り蕎麦は意外と美味しく、ちょっとした旅行気分を味わえたのだった。
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食事を終わる直前に、惜しくも犯人が取り逃され、家に向かう途中も「そろそろ捕まったかなあ?」などと考えながら走る。ドラマの結末は解らないままだったけれど、「さあ、次はどこに行こう?」と、ちょっと元気が出たのだった。もちろん、和田町にも、また行こう。
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