旅に出たらカレーライスを食べたいということを言ったのは檀一雄で、チキンライスを食べたいと言ったのは池波正太郎。食通の先生方が何をまた?とも思わされるのだけれど、つまりは肩肘張らず、庶民的な味で、旅のひとときを楽しみたいということなのだろう。

 けれどもやっぱり、旅には蕎麦が欠かせない。この連休は長野県の松本市で蕎麦三昧を考えていたのだけれど、1泊2日くらいの旅ならば、なにも混み合う連休に出かける必要はない。そんなわけで連休は、一日だけ図書館と古書店を巡った以外は自宅で過ごした。

 その図書館の帰りは、自転車で走る道をいつもの東神奈川経由とは変えて、相模鉄道沿いに走ってみた。和田町から羽沢に抜ければ、途中の急坂を自転車を押して歩く必要はあるけれど、図書館のある日ノ出町から自宅のある新横浜への抜け道になる。
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 で、その途中で、和田町駅の近くにこんなお蕎麦屋さんを見つけ、自転車を止めて、歩道を後戻りして立ち寄ってみたという次第。

 午後の3時前のことで、お客さんはおらず、客席では店のおばちゃんが食事の最中。客席の天井近くにはテレビがあって、チープなサスペンスドラマを流している。捜査官があんな往来で、大声で捜査の打ち合わせをするかなーなどと思いながら食べた盛り蕎麦は意外と美味しく、ちょっとした旅行気分を味わえたのだった。
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食事を終わる直前に、惜しくも犯人が取り逃され、家に向かう途中も「そろそろ捕まったかなあ?」などと考えながら走る。ドラマの結末は解らないままだったけれど、「さあ、次はどこに行こう?」と、ちょっと元気が出たのだった。もちろん、和田町にも、また行こう。
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今回、小田急の駅を回っていて感じたことに、「思いのほか、数多く『駅蕎麦』が店を構えているということ」がありました。「何だ、また食べ物の話か」と呆れられそうですが。

最近、いわゆる「駅蕎麦」も、店の数が減っているように感じます。これは鉄道事業者によって傾向が別れる気もします。JRのローカル駅などは、列車の乗り換えのための連絡が、とても便利になるか、あるいはその逆か、という傾向が特に近年になって顕著になっている傾向があるようにも感じ、そんなことも、駅蕎麦現象の一因になっているような気がします。それからもちろん、私たちの食生活の変化もあります。同じ駅構内に出店している飲食業にしても、サンドイッチとコーヒーなどを扱う業種は、メニューの刷新が著しいのに、駅蕎麦は昔から同じ。
かたや「BLTサンド」「アボガドとクリームチーズ」などを前面に押し出してきているのに、かたや「天玉そば」では、パワーが違い過ぎる。

でも、駅の構内に蕎麦屋さんがあるのも、悪くないなと思いました。ここが駅なんだぞーと、宣言しているような。同じ、東京近郊の私鉄でも、先週にまわった西武鉄道の駅では、駅蕎麦は少なく、パスタ屋さんや、コーヒーショップが多かった。駅前広場には何もなく、改札口のコンコース付近にそのような店が軒を連ねるスタイル。これはこれで今風なのでしょうね。それでも、個人的には、駅蕎麦の存在に親しみを感じました。これは単に、私がおっさんであるということが、その理由であるのかもしれませんが。

これで本当は、日本の鉄道がヨーロッパのように、改札口がなければ、駅周辺のさまざまなショップは、もっと繁盛するのかもしれません。列車の利用の有無にかかわらず、さまざまな人が駅を利用できるようになれる。

今、日本の駅が、クルマに押されて、その地位を低下させ続けています。それであれば、いっそ改札口方式を採用して、駅の地位を高める鉄道が、1社くらい現れても良いのではないか。「駅蕎麦」の健在ぶりを見て、そんなことも感じました。


 


コトデンの取材をした日には、地元の歴史研究家の方の推薦を受けて、琴平駅近くの「おがわ」というお店で、細切り釜揚げうどんを頂きました。勝手に名前を出してしまいますけれど、美味しかったのだから、構わないでしょ?

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地方に出かけて、その土地の名物をことさらに求める習慣は、いつの頃からか、なくなりました。日本全国で同じようなものが食べられるようになったことと、それから、いわゆる名物料理の店は、当たり外れが大きいこと、もっと言えば、観光客目当ての粗雑なものも多いというのがその理由でしょうか。

でも、この日のように、地元の方の推薦があると安心できるものです。食してみますと、飾り気のない、素朴で確かな味でした。だからこそ、毎日でも出かけることができるのでしょう。

ともすると、私たちは、食べ物屋さんにしても、入ってくる情報ばかりを鵜呑みにして頼っている節がある。それだから、出向く店に偏りがでたり、ノウハウを習得したチェーン店ばかりが増え続けることになる。
でも、それは淋しいことでもあります。それが嫌であれば、地域色を守りたいのであれば、私たちも、まず自分の脚と、舌の記憶と、信念を大切にしなければならないのでしょう。これは何も、食べ物に限ったことでなく、旅先で見聞きするもの、すべてについて。

そんなことを書きながら、自分でも矛盾に満ちていることを感じつつ。
でも、自戒も込めて。

写真の釜揚げうどんは、お薦めです。


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かなり、かなり、不定期となる予定のシリーズであります。題して駅のそばのそば。お蕎麦屋さんですね、駅のそばにある。

今、全国の駅のホームから、立ち食い蕎麦の数が姿を消しつつある、そう感じませんか?

食生活の変化など、理由は色々と考えられるでしょう。あるいは、お店の側の味覚想像への不勉強さであるとか、列車ダイヤが過密、または非常に粗いものになってしまい、ちょうど蕎麦を食べるのに都合の良い時間を、駅で持つことができない、というのも、その理由に挙げることができそうです。

でも、蕎麦という食べ物が、まるで魅力を失ったわけではありません。というわけで、駅の、改札の外、駅のすぐ近くにあって、立ち食いに準じた味わいを備え、それでもちゃんと、そこそこ美味しいというのが、このシリーズで紹介する基準であります。仮に美味しくなくても、何か、一芸に秀でていれば、面白いので紹介するかもしれません。

そんなことを言うのは、一度、シリーズ的に追っかけてみたいなと、前から思ってはいたのですが、現時点ですでに候補のお店が2軒くらいしか思いつかない(笑)。普通こういう企画はボツです。でも、始めてしまいます。さて、第2回が紹介されるのは、いつの日か……?


駅のそばのそば その1 東急東横線白楽駅前 美奈登庵


みなと庵


横浜市内に何軒かの店があるチェーン店です。お店により少しずつメニューが異なり、この白楽点が、いちばん立ち食い蕎麦的。お店の中はカウンターと、少しだけテーブルがあります。

みなと庵そば


写真は、もりそば300円+掻揚げ天ぷら150円+生たまご50円で、しめて500円。
安いでしょ。
このお店には「富士山盛り」なる超大盛りのメニューもあり、一度挑戦したのですが、三分の一にいたらず、ギブアップしました。掻揚げも注文を受けてから揚げるので、アツアツです。

白楽駅を出たすぐ先。六角橋商店街の中。



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 甲府でお客さんが降りたので、そこからは座ることができました。デッキの活劇とはお別れです。進行方向左側の車窓からは、やがて南アルプス北部の山々が見え始めます。ごっつい山容をした甲斐駒ヶ岳、平地からでも頂上付近にある巨大な石が確認できる地蔵岳など、名前が分かるだけでも車窓風景はがぜん楽しいものになります。甲府から、最初の下車駅松本までは、およそ1時間10分の道のりです。八王子から甲府までがおよそ1時間ですから、もう半分来たことになる。速いものです。

 さて、松本は、私がもっとも好きな町の一つです。今夜は長野市で泊まるつもりですが、長野新幹線を利用せず、「あずさ」に乗ったのは、松本の町を歩きたいから。ここには見ていて楽しくなるものがたくさんあります。まずは昼食を。

 松本には何軒もの美味しいお蕎麦屋さんがありますが、今日は「野麦」というお店に向かいます。なんだか、家を出て一目散にこの店に来たようで気が退けるのですが、ここは蕎麦が売り切れてしまい次第閉店となるので、のんびりしていられないのです。何年か前のゴールデンウィークに来た時には、13時30分に閉店となってしまいました。本当は、そういうせわしいお店はあまり好きでないのですが、このお店だけは、個人的には別格。ここの蕎麦はご馳走です。写真が大盛り1300円。メニューは普通盛り、大盛り、半分盛りのざる蕎麦だけなので、迷うことはありません。あと、ビール、お酒はあったかな。テーブルに相席となった向いのお客さんは熱燗と蜂の子を注文していました。信州では貴重なタンパク源として知られる蜂の子は、けれども、今では美味しいものと、美味しくないものの両方があるのだとか。このお店のものは美味しいと、これは向いのお客さんの評です。

 伊那谷で育った本多勝一さんの幼少時代の、最高のご馳走は蜂の子ご飯だったとか。煙幕を使って生け捕りにした蜂の子をさっと茹で、砂糖、醤油と共に煎ってご飯に混ぜたものが最高なのだそうです。味への評価には、多少の郷愁も混ざっているのかもしれませんが、試してみたいですね。そのうちに。今日はお蕎麦です。

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